はじめに
大変遅くなってしまい申し訳ございません。旧Twitterで深水英一郎さんにより公募されていた第3回AI歌壇について、ようやく選評を記します。
第3回 #AI歌壇 人間選者として
— 深水英一郎(短歌) (@fukamie) 2023年9月6日
中島裕介さん( @yukashima )にご参加いただきました
第3回AI歌壇の締切は10月8日(日)です。みなさんの参加をお待ちしております✨https://t.co/4rglDtMhKn#短歌マガジン #人間選者 https://t.co/uZ4Kh4AUGm pic.twitter.com/J2mpYaUdaN
3部門で494首のご応募をいただきました*1。ありがとうございます!応募作は全て公開されています。
docs.google.com
そのすべてについて口頭(スペース)での評を付しましたので、気になる方は私の旧Twitterアカウントで「AI歌壇」などと検索してください。
おはようございます#短歌作ろう ふかみえいいちろうです
— 深水英一郎(短歌) (@fukamie) 2023年10月11日
なんと! 歌人中島裕介 @yukashima さんによる
第3回 #AI歌壇 の「全首短評ラジオ」(Twitterスペースによる音声配信企画)が近々おこなわれます
こちら第3回 #AI歌壇 全投稿494首の一覧を共有しますhttps://t.co/DYfYmykPRc… pic.twitter.com/ajg7RTb81B
各部門から特選1首(作者名の後に(★)を付しています)、並選5首を選びました。掲載順は公開されているスプレッドシート順です。スペースでの選評から時間が空いてしまったため、改めて読み直したものとお考えください(=スペースと違うことを言っていても気にしないでください!)。
改めて読んで、各部門6首まで絞るのは苦労しましたし、特選を選ぶのも心苦しいです……。より多くの方を紹介したいため、他部門で名前の挙がった方は意図的に選から外しています(どっちのほうがよい歌かを判定し、一方を優先しています)。泣く泣く選べなかった歌もたくさんあります。ここに載らなかったからといって気に病む必要は全くありません!よい歌なのに拾い上げられていないとしたら、それは私のせいです!みんなで引き続き短歌を楽しみましょう!
自由詠部門
- 仄暗きノイズの溶けた海響に52Hzのメーデーを聴く/ef
- ガソリンが値上がりしてる 虫たちが鳴き出すような自然な様で/淡島けのび(★)
- <選評>今も続くガソリンの高騰。主な原因は世界各地の戦争による産油国の減産という、人の営為の結果である(すなわち「自然のことではない」)はずなのに、自分たちには如何ともし難い。その〈如何ともし難さ〉を「虫たちが鳴き出すような自然な様で」と描いたところが秀逸でした。
- よそびとの生きたほむらを浴びるごと己を定める輪郭の濃く/風吹く
- 傷ついてゐたのだらうかあのひともからだのなかで虹を溢して/高田月光
- I have a dream きみのワイシャツにカレーうどんがはねますように/tali
- 平行を拒否するように先生の板書は何度も空へと向かう/梅鶏
テーマ詠部門:テーマ「セリフ」
- 「光あれ」「そこになければないですね」神はキャン・ドゥへ向かわれた/伊津見トシヤ(★)
- <選評>テーマ詠部門のテーマである「セリフ」にはいろんなアプローチがありました。「光あれ、と神は言われた。すると、そこに光はなかった」のでしょう。キャン・ドゥへ向かわれたのだから、光がなかったのはセ●アか、ダ●ソーか。この歌はストレートに、神と百均店員のセリフを読み込んでいて、パンチが効いていました。
- 「天の川氾濫危険水位です!両岸に居る二人は離れて!!」/みよおぶ
- 「どちらから来んさった?あんたあんまり見ん顔じゃねぇ」祖母の定型/ZENMI
- 「ETCカードが挿入さ「していません」」ふたり叫んで祝日を発つ/石村まい
- この匂い、懐かしいって思うのね あなたの雨は止む方の雨/かきもちり
- 朝が来るたびに鏡に「児嶋だよ!」と十回叫ぶひとりの児嶋/音忘信
9月自選
- ひみつには水色の蝶が棲んでいて遠くに広がる空を夢見る/佐竹紫円
- それはもう詩でしょう秋の入口であちこち折れた傘とわたしは/未知
- 最果てに星はありやと手を延べてアステリスクの有意のひかり/眞木たまき(★)
- 〈選評〉たぶん、私が個人的に統計や量的研究を学び始めたからこそ、この歌の巧みさを評価するだけでなく、共感や驚異を感じてしまった歌でした。統計的に有意であることを示すアステリスク(*)という記号。統計上の有意性を追い求める探求心と、天文的な星を求める感覚とが上手く重ね合わせられています。
- 待ちわびた新刊買えばピッというスキャン音さえ半音高い/奥 かすみ
- 触ればせで触れなば触れねながらえばいざようきみにいつか触れたい/十六夜/朔
- 父の死に嗚咽していた母が今朝いつものように作る味噌汁/まさけ
*1:いくつかの重複があった一方で、1セルに5首記載があったケースがありましたので実数は500首強になろうかと思います