あなたがたの(アイデンティティ)ポリティクス(初出「短歌研究」2023年1月号)

あなたがたの(アイデンティティ)ポリティクス  中島裕介(未来

  2022年2月11日、第三歌集あとがき送稿。ウクライナにおける邦人退避勧告
子の残す麦茶に浮いた油膜にもひびが静かに静かにわたる

  対豪ドル円安加速。衣類メーカPOLITIXに急いで注文
セール品だけを選んで服を買う身の丈にあう政治のために

  2022年3月27日
われもウィル・スミスとおなじように手があり顔があり表情をする

  息子にとって「ハンバーガー」はマクドナルドのしか存在しない
右腕はアクリル板を迂回して向こうに座る子の口を拭く

あなたがたの「「「「「「「「「「「短歌」」」」」」」」」」」

昼食に塩分を足す 新海誠のに一瞬映らないビルで

  ドゥオーキン『原理の問題』第六章「法はどのようにして文学に似ているか」
五輪にもあの国葬にも反対をしています、いました、います、いま

  (*)に会費は支払った、よな。為念
「こちら側のどこからでも切れます」と仰るのですね。その口も拭く

  2022年9月27日、マタイ5:13
あなたがたのために会費や税金を支払うわたしに塩分を足す

  2022年10月19日、第四歌集あとがき送稿
ことばもて我をのぞけば(*)(ルビ:あること)が在ることとなるであろうか