『Starving Stargazer』から10年

本日2018年11月17日で『Starving Stargazer』(ながらみ書房)が刊行されて10年が経過したことになる。


明るい日差しの差し込むビルで初版部数を決めた。ある人の第一歌集の初版部数と同じ600部にしたい、と伝えたら「それは……(そこまで売れないと思うからやめておけ)」と絶句されたことを、そして、ネガティブな感情はなにひとつなく、「そうですよね……面倒かけて申し訳ありません。それでも、手元に何百部残っても励みになると思うので、やっぱり600部でお願いします」と答えたことを、今でも鮮明に覚えている。当時取り上げてくださった書評も数えられるほどだった(まあ、今でも評してもらう機会はほとんどない。「好きな歌人」や「影響を受けた歌人」にも挙げられたことは一度もない。「そんな私の何が現代歌人なんだろう」と考え始めると笑うしかない)。


第1歌集が出てるんだから短歌を辞めてもいいだろうと何百回も思ったし、辞めたら負けだと何百回も思った。それでも刊行したことで『もしニーチェが短歌を詠んだら』を書かせてもらうチャンスに繋がった。『oval/untitleds』が第2歌集になった。


私の手元にはぼろぼろになった1冊と、手をつけていない1冊しか残ってない。中古はたまにYahooオークションに出るだけ。きっと、500部くらいはどなたかの本棚に置いていただけているのだと信じている。


今準備している第3歌集と一般書が出てしまえば、そこから死ぬまで私は何もできないかもしれない。それでも、『Starving Stargazer』が誰かの本棚に届いた、という奇跡的な事態は今でもひそかに誇りに思っているし、これからも誇りに思っているだろうと信じている。