【本編】加藤治郎さん、あなたは文章が読めない(16)いくつかのハラスメントについて

本シリーズ記事の開始後、「加藤の言動に困ったことがある/困っている」といったご連絡を当方に複数いただきました。総括の前に、加藤のハラスメント言動として、個人名を伏せた上で共有させてください*1。私が、加藤が行った言動について複数の方から伺った点に限って列挙しており*2、短歌界隈で見受けられた他のハラスメント案件は含めていません*3。今回記載している内容については、ご相談くださった方全員から、公開のご了承をいただいております。

少し長いまえがき(ねらいとねがい)

後述する加藤の言動も、本記事註で触れている高松の記事に挙げられている被害のいくつかも、短歌界隈ではいろんな方(性別に関わらない)にも見受けられます。「歌壇なんて古い体質なんだから仕方ない」「一定の年代以上の歌人には伝わらない」「偉い先生には意見を言えない」と諦めてしまいそうになる気持ちも分かります。ただ、どうか、高松や、(14)で挙げた佐々木遥花笠海月の記事などを参考に、あなた自身やあなたの仲間の尊厳を守るために、そして短歌を楽しい場とするために、あなたにとって然るべきときに声を上げてください*4。必要に応じて自衛してください*5。身近な誰かや専門家などに相談してください(法務省の人権相談を使ってもよいと思います)。


この記事をご覧になった方で、ご自身の言動に思い当たるところのある方は「現在ではこういう言動はマナーとして慎まなければならないらしい」と、どうか心に留めおきください。歌会などでご自身の言動に対して指摘を受けたときには、まずは一回深呼吸して、話を聞いてあげてください。私は個人の弾劾を望んでいません。「誰しもが短歌を楽しみ、学べるようにするために、あるべき環境を整える」ことを望んでいます。


気を付けていただきたいのは、この記事や他の記事等で、ハラスメントとして挙がっている事態を「よくあること」「被害に遭う前に自衛しないほうが悪い、自己責任だろ」と感じた方です。短歌という場において*6、尊厳が侵される事態が起こるべきではありません。短歌や文学と、短歌や文学に関わらない尊厳を天秤にかけさせるべきではありません。そうして、己の尊厳を守るために、短歌や文学から離れざるを得ない人々をこれ以上増やしたくありません。自衛しないといけないくらい、短歌以外のことに気を遣わないといけない状況は、短歌の本質ではないはずです。


そのうえで、だれでも楽しく短歌をできるようにしませんか。詠って、作って、議論して、批評して、批判して、それでも誰かの尊厳を侵さずに、楽しくやる方法を一緒に模索させてください。


(私がとても好きなマンガに浅田弘幸『I'll』があります。浅田先生(ここではさすがに先生と呼ばせてください)には私の第一歌集に装画をご提供いただきました。『I’ll』未読の方にはぜひご覧いただきたいのですが、この作品に描かれているポイントの一つは「〈遊びじゃないから真剣にやる〉と〈遊びだから真剣にやる〉との間に優劣はない」ということだと私は思います。短歌についても同じで、人生をかけた文芸として短歌に向き合う人も、余暇として短歌楽しむ人もいていい。時間や金銭といったリソースの割き具合も各人で違っていい。文学としての短歌も、工芸としての短歌も、コミュニケーションとしての短歌も、どんな仕方でもいい。誰か好きな歌人に師事してもいいし、師を持たずネットで多くの人たちと交流してもいい。ただ、「誰かに師事するなら、その人から被るハラスメントは全部我慢しないといけない」とか「歌会に参加するなら、個人のプライバシーに関わる情報を訊かれても我慢しないといけない」とか、そういう〈理不尽の抱き合わせ販売〉だけは、もうやめませんか。)

I’ll 〜アイル〜 1 (ジャンプコミックスDIGITAL)

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実際に行われた加藤の言動(複数の方の身に起こったこと)

  • 偉い人・有名な人から頻繁に連絡が来るのは怖い
    • TwitterのDMやメールなど、クローズドな連絡手段で、頻繁に連絡が来る
    • 頻繁にイベントへのお誘いを受ける
    • 参加した先々で、自衛するよう、加藤以外の方々から注意喚起される
  • 歌会などのイベントで理不尽な目に遭う
    • 大声で怒鳴る
    • 過度に叱責する
  • 懇親会で、短歌や創作活動に直接関わらないことを訊かれる
    • 年齢を訊かれる、あるいは年齢がわかるような質問をされる
    • 職業を訊かれる
    • 居所を訊かれる
    • 婚姻歴、恋人やパートナーの有無を訊かれる

シリーズ記事全体の総括は次回(17)にずらします。時間の余裕があれば(18)で、ガイドライン案を試作してみたいと思います。

*1:MeToo(2)」というタイトルをつけるかどうか悩んだのですが、今回は複数人のご連絡をまとめているため、「MeToo」とはしませんでした。性質はシリーズ記事(3)と同種だと認識しています。

*2:お一人からしか伺わなかった内容は記述していません

*3:そちらは、機会があれば別記事にします。他の事案の一部については、必要に応じて、セクハラ案件についての体験談を聴取した、高松霞によるnote記事とあわせてご確認ください。note.comnote.com

*4:必ずしも、本シリーズ記事に賛同しなければならない、というわけではありません

*5:「ハラスメントは自分一人でうまくかわすのが当たり前」という価値観の方も世の中にはおられますが、そんなことはありません。ただ、すべてのハラスメントが即時にゼロになるわけではないでしょう。私のような巨漢の身にはなかなか起こらない事態をしばしば耳にします。あなた自身のためにも、参与者の自衛が必要にならない短歌界隈の実現のためにも、必要な自衛は図ってください。

*6:願わくば「社会全体において」なのですが